PM:5:17 御祭中学付近

終業式が終わり、大勢の生徒達が下校を始めている。
その中には、エリカとその友人数人もいた。

「明日から夏休みじゃん?どんな予定立ててる?」
「あたし海外旅行行くー。エリカはどうすんの?」
「え・・・私?」

楽しそうに予定を話す友人に突然話を振られ、少し困惑する。

「え・・・と、私は多分どこにも行かないと思う。家で本読んでると思う」
「とか言って、実は彼氏とか出来たんじゃないのー?」
「えっ!?」

『彼氏』の言葉が出て、突然慌てる。

「そういえば、あんた最近2組のムスカリと仲イイじゃない?もしかして・・・」
「そ・・・そんなんじゃないよ!」
「あれ?そんなんって何ー?」
「はうっ・・・・・・」

真っ赤になりながら反論するが、結局のところ手玉に取られ、黙ってしまう。

「あはは、冗談よ、じょーだん。あんたホント解り易いねー」
「も・・・もう!・・・・・・あ」

からかわれていたのが解り、反論しようとするエリカが何かを見つけた。

「あ・・・、ごめん。用事思い出したからもう帰るね」
「え?ちょ・・・エリカ?」

突然走り出す。困惑する友人達。

「どうしたのかしら、あの子?・・・・・・・・・ん?」

エリカが向かう先にいるのは・・・。

「はっはーん?なるほどねぇ・・・」

探偵ばりに指を顎によせ、微笑む。
この後、エリカがさんざんからかわれたのは言うまでも無い。

 

 

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pisode7「夏だ!海だ!ロボトルだ!」

 

 

「ムスカリくんっ」
「あ、マツバさん・・・・・・って、どうしたの?なんか息荒いけど」

エリカに声をかけられ、振り向く。
ひざを抑えながら荒い息を整えている彼女の姿に驚き、聞いてみる。

「あ・・・うん、ちょっと学校出るのが遅れちゃって、走ってきたの。」

キキョウを見つけて走ってきた・・・とはいえないので、苦しい言い訳をする。
しかしキキョウはそれほど疑問に思わないようだ。

「いやー、それにしても暑いねー」

並んで歩きながら、キキョウが話し掛ける。

「あ・・・うん、そうだね。海とか行けたら良いね・・・あっ!?」
「う・・・海!?」

何気なく言った一言だが、それがどんな意味を持つものか同時に気付き、赤面する。
暫くの間、気まずい雰囲気が流れる。

「・・・あ、あはは、そ・・・そうだね。ははは・・・」

少しして、キキョウがぎこちなく笑うが、結局気まずい雰囲気は変わらない。

(ま・・・まずい・・・。家に帰るまでずっとこの雰囲気だと耐え切れないぞ。うう・・・、神様仏様ビリケン様助けてくれ〜)

最後のだけなんか違う。
しかし彼の願いが天に通じたのか、天の助け・・・と、その時点では思える者が現れる。
それは・・・・・・。

「やぁマツバさん、今日もお美しい・・・」

レンゲだった。
相変わらずいつものペースで話し掛けてくる。
もっとも、そのお陰でやっと雰囲気が変わったのだが。

「レンゲ・・・、今この瞬間、お前の存在が妙にありがたく思えたよ」
「・・・? どうしたんだお前」

目を瞑り、重苦しく息を吐くキキョウの姿を見て、頭の上に?マークを浮かべる。
まぁ、彼はさっきまでの会話を知らないのだからしかたないのだが。
っつーかそんな事は彼にとってはどうでもいい。

「あ、そうそう。マツバさん、海行きません?」
「はう!?」

雰囲気が変わり、ほっとしていたエリカが驚いて妙な声を上げる。
海の話題が出た所為でさっきまで気まずい雰囲気が流れていたのだ。
下手をすれば再び気まずくなりかねない。
しかしレンゲはそんな事は気にせず話を続ける。

「いやー、オレの伯父さん、海で旅館やってるんですよ。それで友達でも連れて遊びに来いって言われてまして。
ついでにキキョウも連れて行ってやってもいいですけど・・・・・・どうです?」
「は・・・はぁ」

少し頬を赤らめながら、曖昧な返事をする。

(どうしよう・・・。海に行く・・・ってことは水着を着るってことだよね。恥ずかしいよ・・・・・・。
でもムスカリ君も一緒だって言うし・・・それにお母さんにもたまには友達とどこかに行きなさいって言われてるし・・・。
でも海に行くってことは・・・)

以下、同じ考えが延々と続く。
しばしして、一生続くと思われたその思考を遮る声があった。

『私行きたーい!』
「イ・・・イズミっ?」

声はメダロッチから聞こえてきた。
どうやら、いつの間にか通信が繋がっていたらしい。

『ふー、やっと繋がったわよ。さっきから呼びかけてんのにエリカったら気付かないんだもの。
・・・・・・あ、そうそう、私行きたい行きたい!海って行ったこと無いもの。ね、良いでしょ?』
「う・・・うん、そうだね・・・」

言い訳が出来た。
エリカは少しほっとしたそうな。

「んじゃOKだね。キキョウ、おまえどうする?」
「あぁ、わかった。行くよ。一応母さんに相談してみるけど、多分OKが出ると思うし」
「よし、じゃあ明後日の午前8時、御祭西駅で。じゃっ」

爽やかな笑顔で走り去っていく。
残されたのは、キキョウとエリカだけになった。・・・・・・もっとも、イズミと通信が繋がっているのだが。
しばしの間、無言で並び、歩く。

「・・・じゃあ、明後日ね。それじゃ」
「あ・・・うん」

交差点まで来た時、短い会話を交わし、そのまま文字通り分かれる。
二人の家はちょうど反対側にあるようだ。

(あー、海かぁ。マツバさんどんな水着着て来んのかなあ・・・って、いかんいかん)

物思い・・・というより妄想に耽りながら歩いていると、いつの間にか家に着いた。

「ただいまー」

玄関のドアを開ける。
ここで気付く。
靴が、一つ多い。
女物の靴だ。
母さんの物ではない。
しかし、このサイズには見覚えがある。
それは・・・・・・。

 

 

2日後 西御祭駅

すでにエリカとレンゲは集まっている。
メダロットは海に着いてから呼び出すという事で、今は家にいる。
もっとも、通信は繋がっているのだが。

「いやー、キキョウは何やってんですかねー、エリカさん」

彼は、キキョウが遅れていることに少し苛立っている。
もっとも、約束の時間まではまだ少しあるのだが。

「何かあったんでしょうか?風邪とか・・・・・・」
「いや、それはないでしょう。あいつ馬鹿だし。多分寝坊したとか・・・」
『って、アンタ人のコト言えんの?』

キキョウの事を素直に心配するエリカと違い、レンゲはかなり酷い事を言っている。
イズミがメダロッチ越しにツッコミを入れる。
その光景を見て、エリカは少し微笑んだ。

「あ、来ましたよ」

エリカの言葉通り、少し遠くにキキョウの姿が見えた。
重そうな荷物を持ちながら走ってきている。
隣には・・・エリカの見たことの無い女性が居た。
年齢は20かそこらだろうか。中々の美人で・・・どこかキキョウに似ていた。
そして、レンゲにはその女性に見覚えがあった。

「な・・・!?リ・・・リンドウ姉さん!?」

そう、その女性は、キキョウの姉、ムスカリ リンドウだった。
レンゲはダッシュでキキョウの元へ駆けて行く。

「やっほーレンちゃん、お久〜」

リンドウは陽気に手を振っている。
よく見ると、キキョウは荷物を二つ抱えていた。恐らく荷物を持たされているのだろう。
キキョウとレンゲは彼女に聞こえないよう、小声で会話をする。

(おい、キキョウ!なんでリンドウ姉さんがいるんだよ!?)
(いや、なんか一昨日、家に帰ってきてたんだよ。それで、母さんに海行くって事を話してたら「私も行きたーい」とか言い出して・・・)
(せめて連絡ぐらいしろよ!)
(しかたないだろ、姉さんが「秘密にしといてレンちゃんを驚かせちゃおう!」とか言ってんだから!)
(何ぃっ!?)

唖然とするレンゲ。
実は、彼は少しリンドウが苦手だった。

「リ・・・リンドウ姉さん・・・・・・・・・って、あれ?」

隣を見ると、リンドウはいなかった。
いつの間にかエリカの近くに移動していた。

「あなたが、エリカちゃん?私、キキョウの姉で、リンドウってゆーの。よろしくね」
「あ・・・、ムスカリ君のお姉さんなんですか?あの・・・よろしくお願いします」

丁寧にお辞儀をする。

「うふふ、キキョウがよくお母さんに話してるそうよ、『すっごく可愛い娘と友達になった』って」
「えっ!?」

クスクス笑いながら話すリンドウの言葉に驚き、目を丸くする。

「ね・・・ねねねね姉さん!!?」

いつの間にか近くに来ていたキキョウが慌てふためく。

「え・・・あの、ムスカリ君・・・?(///)」
「い、いや、これは・・・・・・」
「・・・・・・ぷっ」
「ちょ、ちょっと姉さん!」

二人のやり取りを見て、思わず吹き出してしまった姉を、赤面しながら怒鳴る。

「あはは、ごめんごめん、冗談よ、じょーだん」

腹を抱えて笑う。キキョウが安堵の息を吐く。
突然、アナウンスが流れた。
次の瞬間、ジリリリ・・・とベルがなる。
電車が来た。

 

 

2時間後

「腰痛い・・・・・・」

長い間電車・・・しかも、かなり古いタイプのもの・・・に文字通り揺られ、やっと駅についた彼等の第一声はこれだった。

「はぁー、リニアトレインに慣れた体にはきっついわねぇ」
「椅子も硬かったっすからねえ・・・」

愚痴をこぼしながら腰を抑え、駅から出るリンドウとレンゲ。
しかしリンドウはすぐに感嘆の息を漏らす。

「うっわぁ、すっごい。ここがレンちゃんの伯父さんのやってる旅館があるっていう所?」
「ええ、そうっすよ。ま、海以外には何にも無い田舎町っすけど・・・」

頭を掻きながら、なんでもないように話す。
しかし、その風景は。
青い空
白い雲
広がる海
そして、澄んだ空気
それらは、都会の風景に慣れていた彼女には新鮮なものだった。

「うーん、スケッチブック持ってくればよかったかしら?」

何気ない彼女の呟きに、エリカが反応する。

「リンドウさん、絵を描くんですか?」
「ん?そうよ。まぁ、一応美大生だしね」
「え、そうなんですか?私も絵が好きで・・・・・・」

その後、彼女達の間で話が弾む。
キキョウとレンゲはなんだか置いてけぼりになった感じだ。

「・・・・・・あ、そういえば、民宿ってどこにあるんだ?ここからじゃ見当たらないけど・・・」
「ああ、・・・・・・ここから30分間バスで行ったところにある」

キキョウの何気ない一言に、レンゲが、かなり嫌そうな顔をして答える。

「バス・・・・・・って、まさか」

彼の予感は的中した。
近くにバス停がある。
そして、遠くから走ってくるバスの姿が見えた。
さっきの電車同様、かなり古いタイプのバスが。
全員が驚愕する。
地獄の始まりだった・・・・・・。

 

 

30分後

「つ・・・疲れた・・・・・・」

嫌というほど揺れるバスから降りたキキョウは、その場に崩れた。
腰が痛い。しかも疲れた。
他の皆も同じ気持ちだった。
しかし・・・。

「う・・・わぁ・・・」

目の前に広がる、海。
この風景の良さは、さっきの比ではない。
白い砂浜。何処までも広がる、青い海。
すぐに疲れが吹き飛ぶ。

「あー、とりあえず旅館行こうか。荷物置いて・・・っと」

歩き出すレンゲに続く一行。
少し歩くと、大きな建物が見えた。
近くの看板には『旅館・海亀荘』と書かれていた。

「あらま、なかなか立派な建物ねえ」

リンドウが呟く。
言葉の通り・・・いや、言葉以上に、海亀荘はかなり立派な外観をしていた。
ここで気付く。
玄関の前に、誰かが立っている。
肌は日に焼けており、口元には立派な髭が生えている。

「おーい、伯父さーん」

レンゲが手を振る。
日に焼けた髭の人・・・もとい、レンゲの伯父もこちらに気付いたらしく、大声でレンゲを呼び、手招きする。

「おお、レンゲ。久しぶりだな。まぁ、中に入れ。お友達・・・可愛いお嬢さんも、ほら」
「あ、はい。宜しくお願いします」

お辞儀をして、中に入る。
外観に負けずとも劣らぬほど、内装も立派だった。

「さて、自己紹介がまだだったな。私はレンゲの伯父、サンシ クマツだ」

向き直り、自己紹介する。
キキョウ達もそれにならい、自分の名を名乗る。

「ふむ、キキョウ君にエリカちゃんに・・・リンドウちゃんか。それじゃあ部屋に案内しよう」

歩き出すクマツの後に続く。リンドウが「ちゃん」と呼ばれたことに喜ぶ(笑
階段を上り、2階の廊下に出る。

「えー、それじゃあ君達はこの部屋に泊まりなさい。・・・ああ、一応寝室は分けられるから大丈夫だよ」

部屋の扉を指差し、鍵を渡す。

「さて、もうすぐ12時だが・・・レンゲ、まずはお昼ご飯を食べていくか?」
「いや、せっかく海に来たんだし、1時間くらい遊んでから浜茶屋で食うよ」

手を上げて答える。

「ふむ、そうか。じゃあ夜の6時に晩御飯になるから、それまで楽しんできなさい」

豪快に笑いながら、去って行く。

「えーと・・・、とりあえず、部屋に入ろうか?」

クマツの豪快さに唖然としていた全員が、やっとこさ我に返る。
レンゲに促されて部屋に入ると、そこが大部屋である事がわかった。
入り口と繋がっている、テレビや小さなテーブルがある居間と、寝室とに分かれている。
これなら着替えは別々の部屋でできるし、布団を持ってくれば寝室も分けられる。

「それじゃ、着替えましょうか?」

重い荷物を床に降ろした、エリカがリンドウに向かって言う。

「そうね。でも、レンちゃんが覗きそうで心配ねえ」
「覗かないっすよ、リンドウ姉さんおっかないし」
「私達は少し時間がかかると思うので、ムスカリ君達は先に言っていてください」
「うん、わかった」

微妙に失礼な事を言っているが、リンドウはスルーした。
キキョウとエリカは短い会話を交わす。
エリカとリンドウが寝室に入り、戸を閉める。
キキョウとレンゲは居間で着替えを済ませる。勿論、服はそのまま脱ぎ捨てずにちゃんとしまった。
肌の上に財布などを入れた上着を羽織り、一足先に海に向かう。

「さて・・・と」

浜辺に立ちながら呟き、メダロッチに手をやる。

「転送!」

二人同時に、叫ぶ。
光球が弾け、脚部パーツをスコープレッグに換装されたボルトとセインが現れる。
勿論買ったわけではない。
海辺にある旅館やホテルでは、水中用パーツの貸し出しも行っているのだ。

「やっと着いたのか?」

転送されるや否や伸びをする。
しかし、次の瞬間目を大きく見開く。

「うぉ、すっげ。これが海かぁ・・・」

呟き、海を凝視する。
と、後方に足音がした。

「はぁい、お・ま・た・せ♪」

振り向く。リンドウだ。中々大胆な水着を着ている。
・・・キキョウ達が中学生という事を忘れていないだろうか?
その後方に、恥ずかしそうに頬を赤らめ、俯いたエリカがと、これまた脚部を水中用であるフィルテイルに換装されたイズミが立っていた。
エリカの水着はリンドウと比べるとはるかに大人しいワンピースの水着だが、彼女の白い肌にとても良く似合っていた。
キキョウ達は思わず見とれてしまう。

「あの・・・、恥ずかしいから、あんまり見ないでね・・・」
「あ・・・・・・、ご、ごめん」

さらに顔を真っ赤にし、小さな声で呟く。

「ほらほら、突っ立ってないの。早く行きましょ。今は11時半だから・・・、少し遊んだらあそこの浜茶屋に集合ね
さ、行きましょエリカちゃん」
「あ・・・、はい」

リンドウに促され、歩いていく。
キキョウとレンゲは暫くの間ぼーっとしながらその場に立っていた。

「・・・・・・なぁ、キキョウ」
「・・・なんだ?」

レンゲの呟きに、答える。

「来て、良かったな・・・・・・」
「・・・ああ」

我が人生に一片の悔いナシ!!
彼等は、心の中でそう叫んでいた。

 

 

約1時間後、浜茶屋

「ふぅ、1時間程度でも結構疲れるわねえ。最近運動してなかったし・・・あたしもそろそろ歳かしら?」
「リンドウ姉さん、自覚してたんすか?・・・ぐはっ!?

余計な一言の所為で、レンゲの首筋に問答無用のチョップが叩き込まれる。
言うまでもないと思うが、首は人体急所の一つだ。
そこに強烈な一撃を喰らったレンゲは暫くの間悶絶する。

「あーあ、言わなきゃ良かったのに。顔は良いのに、あれじゃ2枚目半ね」

既に浜茶屋で座り込んでいるイズミが呟く。
リンドウは美人で頭も良いが、口より先に手が出るのが難点だ。
子供の頃から苦労してきたので、キキョウはもう慣れているが、ボルトはまだ付き合って日が浅いのでたまに失言し、
張ったおされている。ちなみに昨夜は機能停止に追い込まれた。
人数分の水を持って店員がやってきてメニューを渡す。

「さて、なんか頼みましょうか。あたしが奢るわよ」
「い・・・良いですよ、自分で払いますから・・・」

遠慮するエリカに、リンドウは・・・。

「気にしないの!お姉さんの好意に甘えなさい!」
「は、はいっ・・・」

強い口調のリンドウに、気が弱いエリカは思わず従ってしまう。

「よろしい。それじゃ・・・あたしは味噌ラーメンね。後、この子達にオイル三つ」
「それじゃ・・・オレはヤキソバね」
「私は・・・塩ラーメンを」
「オレもし・・・塩ラー・・・メン・・・」
「は・・・はい、かしこまりました」

各々の選んだメニューを店員に告げる。レンゲは息絶え絶えだ。店員も困っている。

「それでは少々お待ちください」

軽く頭を下げ、厨房へ入っていく。
やる事が無いので、暫くの間各々が好きな行動を取る。

「・・・・・・あれ?」

ここで、気付く。
リンドウの左手に、メダロッチが巻かれていない。
彼女もメダロッターだし、最近のメダロッチは防水機能を持っているので海でも壊れる事は無い。
なのに、何故彼女はメダロッチをつけていないのだろう?
そういえば彼女だけメダロットを転送していないし、オイルも三人分しか注文しなかった。

「姉さん、エレナは?」

エレナ・・・とは、彼女のパートナーであるCAT型メダロット、デンキャットの事だ。

「ん?・・・あー、あの子は家でお留守番。母さん一人にしとくと心配だし、最近物騒だし」
「あー、なるほど」

短い説明文だったが、キキョウはそれで理解した。
彼等の母、レンカは、はっきりいっておっちょこちょいだ。
どこか抜けてるので、出かけるときに玄関の鍵をかけ忘れる・・・なんて事もよくある。

「あ、そういえば来る途中で見たことなんだけど、明日・・・」
ああもう!ぐだぐだうっさいわね!!

リンドウが何か言おうとしたが、誰かの大きな声に途中で遮られた。
キキョウ達の声ではない。
声がした方向を見ると、二人の男女が立ち上がって言い争いをしていた。
ぱっと見高校生くらいか。
女性の方は、少し赤が混じっているショートカットの髪で、何故かアンテナのようなものが生えている。
水着はまぁまぁ普通。レンゲが「オレ好みかも」などと呟いていた。
男性の方は茶髪で、女性と同じようにアンテナが立っている。
ただ、何故か彼は水着を着ていない。
ズボンに、この場に似合わぬジャケット。
某ラブコメ漫画単行本13巻のラストで結婚した女性がそれより少し前に着ていた服装みたいな感じだ。
近くにもう一人男が座っている。
こう言っちゃなんだが、あまり特徴と言う特徴が無い。
ただ、少し軽そうな印象を受ける。
彼は二人の言い争いに口を挟む気は無いようだ。

「あら、あの子達・・・」

リンドウが驚いたような声を出す。
が、その理由は誰もわからなかった。

うっさいも何もあるか!こんな事してる暇は無ぇだろうが!
良いじゃないの!あたしだってたまには遊びたいわよ!
良く無ぇ!ふざけんなバカ女!!
な・・・何よ!?このばか男!!
バカ女!
ばか男!

二人の口論はさらにヒートアップ・・・というか、低レベルな痴話喧嘩になってきている。
流石に見ていられなくなったのか、もう一人の男がやっと声を出す。

「おい、お前ら・・・」
何よ!?
なんだよ!?

口論をしている男女が、もう一人の男を睨みつける。
しかしそんな状況に慣れているのか、冷静に次の一言を放つ。

「・・・・・・目立ってるぞ」
「「・・・へ?」」

慌てて周囲を見渡す。
ここでようやく、店内の視線が自分達に注がれている事に気づく。
頬を真っ赤に染め、その場に座り込んでしまう。
店内に忍び笑いが充満する。
二人の男女はさらに真っ赤になり、何も言えなくなってしまう。
突然、リンドウが立ち上がり、歩き出す。

「どうしたんすか、リンドウ姉さん」

レンゲが呟く。

「んー、ちょっとねー」
「ちょっとって・・・」

キキョウが首をかしげる。
少しすると、リンドウは先ほどの男女に話し掛けていた。
話し掛けられた3人は明らかに驚愕していた。
二言三言話し、また戻ってくる。

「はい、ただいまー」
「リンドウ姉さん、今の人達知り合いだったんすか?」
「うん、私がバイトしてる喫茶店の常連さん。なんかね、偶然遊びに来てたみたい。
でね、同じ宿だったみたいなの。後で紹介するわねー・・・っと、来たみたいね」

リンドウの言葉通り、注文していた食べ物がやっと来た。
見た目は・・・少し悪かった。

「お・・・美味しそうですね」
「あ・・・あはは、うん、そうだね」
「それじゃ・・・」
『いただきまーす』

それぞれがそれぞれの料理に箸を付ける。
・・・メダロットは口を付ける。
見た目と違い、味はかなり良かった。

 

 

その日の夜。
いきなり飛びすぎてるような気がするが気にしてはいけない。

キキョウ達は夜の食事を終え、部屋でくつろいでいた。
ボルトとセインは自分の武器を布で丹念に磨いている。
理由は、潮風に当たったので、放っておくと錆びるから・・・ではない。
メダロットの装甲、NFRPはプラスチックの一種だ。プラスチックが錆びるなんて話は聞いた事が無い。
理由は、先ほど食事をしているときにクマツから聞いた話。
『明日は近所でメダロットの大会がある』だった。
昼にリンドウが言おうとしてたのもこれの事らしい。
当然参加する事になり、ボルトとセインは張り切っているのだ。
ちなみにイズミは(メダロットの癖に)ふかふかの布団で眠っている。
彼女曰く『私は強いから武器の手入れなんて必要ないの』だそうだ。

「さて・・・、私達はやることないわねぇ。それじゃエリカちゃん、女の子同士でお風呂に入りに行きましょうか?アネモちゃんも誘いましょう」
「あ・・・、はい。ご一緒させて頂きます」

バスタオルと荷物が入ったポーチを持って部屋を出るリンドウにエリカが続く。
アネモとは、リンドウのバイト先の常連の一人、マラユイ アネモ。
昼に口論していた男女の女性の方。
男性の方はレンギョウ ハナキ。
なんでも、メダロットの研究所に勤めている人の息子らしい。
ちなみに、もう一人の男はアマリ カイドウと言う名前だ。
リンドウは部屋から出た後、一度振り返る。

「キキョウ、ボルト君、セイン君・・・レンちゃんをちゃーんと見張ってなさい?」
「何言ってんすか、覗かな・・・」
「OK」
「まかせろ」
「はい、わかりました」
「って、お前らぁっ!?」

リンドウの言葉に反論しようとするも、真顔で頷くキキョウ達に怒り怒鳴る。

「はい、それじゃよろしくね」

ばたん、と戸を閉める。
足音が遠ざかっていくのが解る。

「・・・・・・で、何処へ行く?」

キキョウが呟く。
レンゲはいつの間にか部屋を出ようとしていた。

「か・・・、体が勝手に女湯に・・・」
「待てィ」

その後、キキョウとレンゲにボルトとセインを交えた壮絶な取っ組み合いが起こった事は言うまでも無い。

 

 

「良いお湯ですね」
「ほーんと、そうねー」

リンドウとエリカ、そしてアネモは一緒に露天風呂に入っている。
ヤバイのでどんな格好かは書けない。
想像も禁止だ。
・・・・・・・・・話を戻そう。

「ねぇねぇ、エリカちゃん。あなた、キキョウ君の事好きなの?」
「えっ!?」

突然なアネモの言葉に驚き、うろたえる。

「あの・・・、ムスカリ君はただの友達で・・・・・・」

真っ赤になりながら小さな声で呟く。
しかし、アネモは間髪入れずに。

「でもさ、会ってから日は浅いんでしょ?なのに、なんで一緒にこんな所まで来てるの?」
「そ・・・それは・・・、その・・・」

答えに困る。
頬がさらに赤くなる。
そんな彼女を見つめていたアネモは・・・吹き出した。

「あ・・・はは、ごめん。からかってみるつもりだったんだけどね」
「ア・・・アネモさんっ」

からかわれていたとわかり、珍しく怒鳴ろうとしたが、脱力して結局いつもと同じ声になってしまった。

「だから、ごめんってば。にしても、エリカちゃんってホントにわかりやすいのね」
「は・・・はぁ、よく言われます・・・」

俯き、小さな声で答える。

「それにしても・・・、キキョウ君って、気付いてないの?・・・・・・鈍いのねえ。
エリカちゃん、もうちょっと積極的にアプローチかけた方が良いんじゃない?」
「あのねぇ、アネモちゃん。あなた、人のコト言えるの?」

突然リンドウが口を挟む。
すねたような顔をするアネモ。

「な・・・なんですかリンドウさん。私はハナキのことなんて、別になんとも思ってませんよ」
「・・・私、ハナキ君の事とは一言も言ってないわよ?」
「なななななっ!?」

悪戯っぽいリンドウの言葉に、アネモは赤面し慌てる。
その姿を見て、エリカも少し笑ってしまう。

「ちょ・・・、エリカちゃん!?あー、もう!そういうことする子には・・・こうだっ!」
「え?・・・きゃーっ!?ちょ・・・やめてくださいーっ!!」

エリカが悲鳴をあげる。
何が起きているかはご想像にお任せします(爆。さっき言ったのと矛盾してるし)

「もう・・・、なーにやってるんだか」

リンドウは楽しそうに微笑み、その光景を見ている。
しかしアネモの矛先は今度は彼女に向けられた。

「でも、リンドウさぁーん?突然居なくなったと思ったらこんな所に居たんですか。ユウジさん、困ってましたよ?」
「へっ!?」

予想しなかった口撃に、リンドウが素っ頓狂な声を上げる。

「あの・・・、アネモさん、ユウジさんって?」
「ユウジさんっていうのはね、リンドウさんの恋・・・」
「アネモちゃん!余計な事言わなくて良いから!!」

焦ってアネモの声を遮る。
しかし、アネモは意地悪な笑みを浮かべ・・・。

「だ・め・で・す・よ♪リンドウさんだけ安全圏に居るなんて許しません♪」
「う・・・」

引きつった笑みを浮かべ、僅かに後ずさる。
しっかりした性格のアネモは、しっかり反撃もしてくるという事をすっかり忘れていた。
その後、悲鳴、赤面交じりの女の子らしい話が数十分間続いた。

 

 

「ただいまー」

浴衣を着たリンドウが部屋の戸を開ける。
部屋の中では、レンゲがキキョウ達にロープでぐるぐる巻きにされ、猿轡をかまされて床に転がっていた。
何かムームー言ってるが、変な縛り方ではないので問題は無い(謎

「あれ?姉さん、マツバさんは?」

キキョウが呟く。
確かに、エリカはリンドウと一緒に居なかった。

「あー、エリカちゃん?あの子、少し外の空気を吸ってくるって」
「外に?夏とはいえ夜はまだ少し寒いし・・・、オレ、上着持ってってあげるよ」

キキョウがジャケットを持って部屋から出て行く。
それを見送るリンドウ。

「・・・・・・さて、それじゃ、私もちょっと出てくるね。ボルト君、セイン君、お留守番よろしくね」

手を振って部屋から出る。
レンゲが暴れていたが、それは無視しておく。
しばらく歩くと、海が眺められる広い場所に出た。
辺りには誰も居ない。
今の彼女にとっては都合のいい場所だった。

「・・・・・・・・・はぁ。気分転換に来てみたんだけど、やっぱなんの解決にもなんないわねぇ」

事故防止用の手すりにもたれかかりながら、溜息を吐く。
その表情は、先ほどとは違い、暗い。
突然、美しいメロディーが響く。
彼女の携帯電話のの着信メロディーだ。
ポーチから携帯を取り出し、画面を見る。
メールが一通届いていた。
片手で操作をし、メールを開く。
表示された文章を一目見ると、それから先は見ずに電源を落としてしまった。
再び、重いため息を吐く。

「ったぁくあのばぁか・・・」

虚ろな表情で、左手を顔の前に持ってくる。
その手が持っているもの、それは、指輪だった。

「いきなりこんなもの渡されたって困るわよ・・・・・・」

指輪を見つめながら、呟く。

「そりゃ貰って嬉しくないわけじゃないけどさ。・・・・・・なんで私なのよぉ、私より綺麗な人沢山居るのに」

両手で、暗い表情の顔を覆う。

「お母さんは『これはあなたの問題だからあなたが自分で決めなさい』なんて言って助言もしてくれないし・・・もぉっ!」

怒ったような声を出して、その場に座り込む。

「・・・・・・・・・?」

ふと浜辺を見ると、そこに二人の男女が立っていた。
それは・・・ハナキとアネモだった。
何かを話しているが、昼のような口論ではないようだ。

「・・・・・・ほんと、若いって良いわ・・・」

懐かしむように、呟いた。

 

 

「マツバさん」
「あ・・・、ムスカリ君」

浴衣姿で浜辺に佇むエリカに、後から声をかける。
声をかけられたエリカは、振り返り、声の主の名を呼ぶ。

「そんな格好で居ると、風邪ひくよ。・・・はい」

彼女の肩に、ジャケットを被せる。

「あ・・・、ありがとう」

恥ずかしそうに俯きながら、呟く。
キキョウがエリカの隣に立つ。

「どうしてたの?」
「あ・・・、うん。星を見てたの」

答え、天を仰ぐ。キキョウもそれに倣う。
そこには雲一つ無い、満天の星空が広がっていた。
微笑みながら星を眺めるエリカを横目に見て、話を切り出す機会を探る。

「えーっと、・・・・・・明日の大会さ、頑張ろう」
「え?あ・・・、うん。そうだね。・・・どこまで行けるかな?」
「そーだなぁ・・・」

腕を組んで暫く考え、そしてはっきりと言う。

「やっぱ、どうせ出るんなら優勝目指さなきゃ」
「優勝・・・か。あはは、そうだね」

エリカが、キキョウの言葉に微笑む。
星空から目を離し、キキョウを見つめる。
仄かに胸が熱くなるのを感じる。

「あの・・・、ムスカリ君、私、ムスカリ君の事を名前で呼んじゃ・・・だめかな?」
「え!?」
「その、ムスカリ君じゃなくて・・・、キキョウ君、って」

そこまで言ってから、恥ずかしそうに頬を赤らめ、俯く。
上を見たり横を見たり忙しい。
キキョウも少し戸惑っていたが、少しして・・・。

「うん、良いよ」
「・・・ほんと?」
「うん」

微笑み、答える。

「その代わり・・・オレも、マツバさんのこと名前で呼んで良いかな?」
「う・・・うんっ」

嬉しそうに答える。
笑顔が輝いて見える。

「・・・くしゅんっ」

突然くしゃみが出てしまう。
驚き、駆け寄るキキョウ。

「だ・・・大丈夫?・・・冷えてきたし、そろそろ戻ろうか?」
「あ・・・、うん。・・・・・・きゃっ!?」
「うわっ!?」

旅館に戻ろうと歩き出す・・・が、足元にあった大きな石に躓き、そのままキキョウの胸に倒れこんでしまう。
二人の頬が真っ赤に染まる。
互いの鼓動が聞こえてくる。
頬が朱みを増すと同時に、鼓動も高鳴っていく・・・。

「ご・・・ごめんなさい!」

慌てて離れる。
二人の間に気まずい雰囲気が流れる。

「あ・・・あの・・・・・・」
「と・・・、とりあえず戻ろう」
「・・・・・・・・・うん」

互いに俯きいたまま並び、無言のままで歩いていく。
エリカは、胸が熱くなるのを感じていた。
今まで、感じた事の無い想い。
・・・いや、これほど胸が熱くなった事は今まで無かっただけだ。
同じようなモノは、ずっと前から感じていた。
そう、何年も前から・・・・・・。

 

 

翌日。

「おおぉおおおおおおっらぁ!!」

絶叫と共に放たれた斬撃が相手の頭部にクリーンヒットし、機能停止させる。
力を失い、相手のリーダーメダロットが倒れる。

「リーダー機、機能停止!チーム海亀荘の勝利です!!」

レフェリーが勝利宣言をする。
ちなみにチーム名は宣伝。
クマツに「出場するなら是非」と言われたらしい。
・・・・・・それはともかく、キキョウ達は今の勝利で早くも準決勝に進出した。
目標の『優勝』まで後少し、と言った所だ。

「しかし、妙に手応えの無い相手だったな」

セインが呟く。
確かに、彼等はほぼ無傷でここまで来ている。
初戦はともかく、準々決勝でもほぼ無傷、ではいくらなんでもおかしい。
実は、彼等のいるBブロックはあまり強いチームがいないらしく、そのためこうして勝ち進んでこれているのだが。

「ま、そんなこと気にしても仕方ないさ。これから50分の休憩だから、昼飯とメンテと準決勝の作戦会議と行こうや」
「・・・まぁ、それもそうですね」

おき楽な声で話しながら、選手控え室に歩いていくレンゲ。
それに続く、一同。

 

 

「さて・・・と、それじゃ準決勝について」

昼飯のおにぎりを平らげたレンゲが、全員の前に立つ。

「準決勝の相手はチーム『Gun&AngelTiger』
ハナキさん達のチームだな。
構成は、TIG型と、AGL型を改造したメダロット。そして、ガンマンみたいな格好をした・・・多分、オリジナルメダロットだ」

言って、3枚の写真を取り出す。
写真にはそれぞれ、天使型メダロット、虎型メダロット、そしてガンマン型メダロットが写っている。

「で、対策だけど、AGLはどうやら足が付いてるっぽいな。跳ぶだけじゃなくて、歩くことも出来るみたいだ。
えーと、TIGは・・・外見は変わってないな。はっきり言って今の段階じゃわからん。
それで、ガンマンだが・・・はい、集合」

レンゲの言葉に、全員がレンゲの近くに集まる。

「写真を見て解るように、右手には銃、左手にはナイフがつけられてる。
リンドウ姉さんに話し聞いたんだけど、普通のライフルとナイフらしい。
でも、その威力は半端じゃないみたいだな。
それ以上は『フェアじゃない』っつって教えてくれなかったけどな」

言い終えて、髪の毛を掻き毟る。

「で、作戦だけど・・・どうする?意見のある人手ぇー上げてー」

言葉に、ボルトが挙手する。

「はい、ボルト君」
「はい!なんか気持ち悪いぞその言い方!!・・・じゃ無かった。
今から作戦立ててもあんまり意味無いんじゃないか?」
「・・・・・・は?」

彼の言葉に、全員が唖然とする。

「だってよ、型決めたって相手がオレ達の思ってたのと違う奴だったらむしろ邪魔なだけだし、
それに今までだって行き当たりばったりでやってこれたし」
「いや、お前なあ・・・」
「・・・ふむ、無茶苦茶だが、確かにそうだな」

セインが呟く。

「セイン、お前まで・・・」
「しかし、主。相手の力量は実際に戦ってみて始めて解るもの。
 百聞は一見にしかず、とも言いますし、いつもどおり、まずはぶつかってみた方が良いでしょう」
「・・・そりゃそうだな、オレも頭使うのは苦手だし、キキョウとエリカさんはまだ初心者だし。
 んじゃ、いつもどおり行き当たりばったりで行くか」
「おっしゃぁ!」

レンゲがニヤリ、と笑う。
キキョウとボルトがほぼ同時にガッツポーズ。
それを見て、エリカがくすりと微笑む。
次の瞬間、室内のスピーカーからアナウンスが流れる。

ぴんぽんぱんぽーん♪

『チーム海亀荘の皆様と、チーム『Gun&AngelTiger』の皆様にお知らせします。
もうすぐ準決勝第一試合が始まりますので、速やかにリングへお集まりください』

ぴんぽんぱんぽーん♪

アナウンスが終わる。
キキョウ達6人は顔を見合わせ、そして微笑む。

「それじゃ・・・、行こうか?」
「うん、頑張ろうね!」
「せーっの・・・」
『えいっ!えいっ!おーっ!!』

全員が声を揃え、右手を上空に突き出す。
自分達の、勝利を願って。


「もうちょっと良く狙わないと、アタシには当たらないわよ!!」
戦場を駆ける天使。

「我が奥義、見せてくれる・・・!」
真に聖なる洸。烈風の如き斬撃。その名は・・・。

「The Endだ。負けを認めな」
再び味わう、敗北。しかし、それは、圧倒的な敗北ではない。

交じり合う、刃と銃・・・・・・

 

メダロットZERO第8話
「白熱の海のロボトル」