御祭中学校

登校してきた生徒達で埋め尽くされてる校門に、キキョウの姿もあった。
その足取りは妙にふらついている。
周囲に負のオーラが漂っており、周囲に人は居ない。

「おっす、キキョウ!!」

突然現れたレンゲが思いっきり背中を叩く。
キキョウはふらつきながらゆっくり振り返る。
目の下には、隈があった。

「おわっ!?どうしたお前?」

驚き、一歩後ずさる。

「ああ、ちょっと昨日の夜メダロットの研究しててな・・・気付いたら朝だった」
「徹夜で研究?おまえが?・・・・・・何かあったのか?」

彼はキキョウに今までに無い熱意が芽生えているのを感じ取っていた。

「ああ、実は昨日な・・・・・・」

 

 

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pisode5「敗北を知って」

 

 

「・・・・・・そうか、負けたか」

昨日起こった事を歩きながら聞いていた。
紅野のこと。
ロボロボ団の事。
まるで別次元の戦いのこと。
全部を聞いた後で、呟く。

「まぁ、誰だって一度は負けるさ。オレなんか最初のうちは負け続きだったからな」

レンゲの言葉に、驚く。

「おまえも負けたのか?教えてくれないか?それからどうしたんだ?」
「努力した」

レンゲの意外な即答に、少し唖然とする。

「負けたら努力して努力して、強くなる為に頑張った。努力したから今のオレが居る」

懐かしむように、言葉を続ける。

「ま、おまえだって頑張りゃいつかは・・・」
「でもさ」

俯きながら、呟く。

「負けた後であんな戦い見せ付けられたんだ。自信、無くしちまったよ・・・」

そのままどこかへ走り去ってしまう。

「あれま、ありゃあ重症だな。彼女にでも頼むか・・・っつーか、授業どうする気だ?」

結局、キキョウはその日は学校を休んだ。

 

 

ロボロボ団基地御祭町支部

先日の男の周りに、別の幹部達が居た。

「まさかフォルテが負けるなんてねぇ」

美女・・・エレジーが、落胆したように呟く。

「しかも女子に負けたそうだな。幹部ともあろうものが情けない」

大男ことテンペストーゾが低い大きな声を出す。

「あら?それって差別じゃないの?」
「止めておけ」

怒ったようなエレジーを、男・・・フォルテが制止する。

「負けた事は事実だ。言い訳はせん」
「おやおや、潔いじゃないか」

優男、プレストがフォルテを嘲る。

「なんとでも言え・・・だが、ここにいるものであの女を倒せるものはいまい」

それは間違いないと思った。
あの女は自分の技を避けたのだ。
普通のメダロットの動きではない。
奴には、間違いなく人知を超えた力がある。
そこまで考えて、馬鹿げていると思った。
神など、居るはずが無い。
ならばなぜあんな動きが出来る?努力したからだろう?
そうだ、オレも今以上に強くなればいいのだから。
彼は、今以上の力を手に入れる決意を固めていた。

 

 

御祭町内 御祭公園

キキョウは設置されたブランコに座り、空を見上げながら、物思いにふけっていた。

「どうしたらいいんだろ・・・」

ふと、背後に人の気配を感じた。
ふりかえる。

「おはよう、ムスカリ君」

そこにいたのは、エリカだった。
こんな時間帯だから、セーラー服を着ている。
考えてみれば自分も学ランを着ている。
こんな時間帯にこんな場所に居れば補導されかねない。
エリカも同じ事を考えたのか、顔を見合わせると苦笑した。

「マツバさん、なんでここに?」
「うん、サンシ君に教えてもらったの。授業、ちゃんと受けなきゃだめだよ?」

隣のブランコに座る。

「ロボトル、負けたんだって?」
「・・・・・・うん」

彼女の言葉に、俯きながら答える。

「今まで何度か勝っただけなのに、自分が強いって思い込んでたんだ。
 ほんとはまだ全然弱いのに。強くなるには、オレが変わらなきゃいけないんじゃないかな」

拳を握り締め、それを見つめながら言う。
今のままじゃいけない。変わらなきゃいけない。
そう思っていた。

「ムスカリ君は、ムスカリ君のままでいいと思う」

エリカの言葉。驚き、顔を上げる。
彼女のは少し頬を赤らめていた。

「強くなって、ロボトルに勝っても、そこにいるのがムスカリ君じゃない誰かだったら、意味無いと思う。
 だから、ムスカリ君は、今のムスカリ君のままで頑張れば良いと思うよ」

キキョウは驚いていた。
彼女が、こういうことを言ってくれるとは思わなかった。

「・・・そうかな?」

ブランコから立ち上がり、上を見上げる。
空は青く、太陽がまぶしかった。

「そうだよ」

エリカも立ち上がり、キキョウの隣に立つ。
そして同じように空を見上げる。

「そっか・・・」

呟く。
彼は、何かを見つけていた。

「なんとなく、わかった気がする
 ありがとう、マツバさん」

エリカを見、微笑む。
彼女ははにかみながら、微笑み返した。


「うおおおお!!」
決意を胸に、強くなる為に、戦う。

「困ったわねぇ・・・、これが無くちゃいけないのよ・・・」
母はなにを思うのか!?

「強くなるために、乗り越える。絶対に」
熱くたぎる炎。それを、抑えきれぬまま。

ゆっくりと、運命の分岐点へと近づいていく

 

メダロットZERO第6話
「特訓」