地球からはるか離れた惑星、惑星α。
「JOKER合金」と呼ばれる特殊合金が生成できる唯一の星。
この星は豊かな自然に恵まれ、高度な科学技術を持っていながら、
この星の住人は宇宙に進出しようとは考えなかった。
「JOKER合金」を使用して造られた「JOKER」
8m程度の人型ロボットは、一般的な作業用として用いられたが、
やがて兵器として利用されるようになった。
そして惑星α歴608年、ついに戦争が起こった。
戦乱の嵐が吹き荒れる中、惑星αの一国家、プロメテウス共和国では、
未だに戦火に巻き込まれることはなかった。
しかし、それは長くは続かない・・・・・・・・・。



episord1 Aprt Gun dars


―プロメテウス共和国 ミッドガルド村―

プロメテウス共和国の首都、アスガルドシティに近いこの村では、
毎日の平和な光景が見える。
畑では人々が働き、野原では子供達が遊んでいる。
今の時代、JOKERが農業用などに使われている為、
たいして人は働かないでよくなっている。
そんな光景を、丘の上で見つめている一人の青年がいた。
特徴的な髪の毛、健康な日焼けした肌。目つきはあまり良いとはいえない。
彼の名前はショット=ショコラ。
このミッドガルド村に住む青年。
彼の目は畑で作業しているJOKERに釘付けになっていた。

「ショットぉ〜」

後ろから声をかけられ、振り向く。
そこには一人の女性が立っていた。
肩の辺りまで伸びている髪型。
肌はショットとは対照的に、ほとんど日焼けしていないように見える。
同じくこの村に住む女性で、ショットの幼馴染、クリス=ハンナ。

「なんだよ」

相変わらず目つきの悪い目で彼女を見る。
傍から見れば睨みつけているようだが、彼にとっては普通に人を見ているだけだ。
いつものことなので、彼女もたいして気にしていない。

「まぁたJOKER見てるの?どうせ二十歳になるまで乗れないんだから、
あまり考えないようにしておけば?」

その言葉に、少しムッとするショット。

「オレは早く自分のJOKERを持ちたいんだよ」

そういって彼女から視線をそらす。
やれやれといった顔をするクリス。

「ところで、カリスおじ様の話聞いた?」

そういいながらショットの隣に歩いてくる。

「聞いたよ。もしかしたらこの国も戦争に巻き込まれるかもしれないって」

そういっている彼の視線は、まだ畑の作業用JOKERに向けられている。
その横顔を見て、クリスがくすくすと笑う。

「な・・・・・、なんだよ!」

少し赤くなりながら大きな声を出す。

「なんでもないわよ♪ところで、ちょっと遺跡見に行きましょ」

そういってショットの手を引っ張る。

「お・・・おい!」

手を握られて、さらに赤くなっている。
それをみて、またくすくすと笑うクリス。
この村では、これはごくあたりまえの光景だった。
それは、いつまでも変わらないと思っていた。
そのはずだった。


―ユグドラシル遺跡―

ここは、ミッドガルド村の近くの森の中にある遺跡で、すぐ近くに巨大な樹木が聳え立っている。
プロメテウス共和国に伝わる神話にユグドラシルという樹木が登場し、
それにちなんで付けられた名前だが、最近の研究でこの遺跡は大して古い物ではないことがわかった。
誰が何の目的で造ったのかはわからないが、最近としては好奇心で遺跡の内部を探検する者が多い。

「相変わらず気味の悪いところねぇ〜」

遺跡の前でそんなことをいうクリスの隣で、ショットがじゃあ来なければいいだろ、と心の中で思っていた。
しかし、彼がそんなことを思っても、クリスはさっさと遺跡に入ろうとしてしまっている。
しかたなく、彼も彼女の後に続く。
と、その時だった。

「何・・・・・・?この音・・・・・・」

立ち止まり、振り返るクリス。
ショットも、振り返り、村の方を見る。

「村が・・・・・・、燃えてる・・・・・・・!?」

彼の言葉のとおり、村からは煙が立ち昇っている。

「大変!早く戻らなきゃ!!」

村の方向に駆け出すクリス。
しかし、その手をショットが掴む。

「何やってるの!?村が大変なのよ!?」

「この音が聞こえないのか!?」

彼の言葉に耳を澄ませてみると、何かが風を切るような音が聞こえる。

「何だ・・・・・?あのJOKER・・・・・・・・」

ショットの視線の先には、空を飛ぶ灰色のJOKER。
と、一体の作業用JOKERが立ちはだかる。
しかし、灰色のJOKERはそれに向かって腕に持っていたライフルを連射する。

「・・・・・・!!遺跡の中に急げ!!」

遺跡に向かって走り出す。
後ろを見ると、灰色のJOKERが放った銃弾の流れ弾が樹木に直撃し、
樹木が倒れてきている。

「きゃあーーーーー!!」

完全に樹木が倒れた。
間一髪、遺跡の中に非難する。
しかし樹木が遺跡の入り口を崩してしまっている。

「もう!なんなのよ!!」

崩れた入り口を睨みつけながら、
クリスが怒声を発する。

「すくなくとも、入り口からは出られないな」

ショットは、そう言って立ち上がり、
歩き出した。

「ちょ、ちょっと!どこ行く気よ!!」

突然ショットが歩き出したので、慌てて呼び止める。

「出口を探すに決まってるだろ」

あっさり答える。

「ちょ・・・、私は嫌よ!
なんでこんな気味の悪い場所を歩き回らなきゃいけないの!?」

立ち上がって抗議の声を上げる。
ぽりぽりと頭を掻くショット。

さて、どうする・・・・・・・?

 

「無理矢理連れて行く」

「置いていく」

 

戻る